2020年度

電気刺激と映像を併用した運動錯覚の生起に関する研究

錯覚を利用したリハビリテーションシステムの開発を行っています.外部からの視覚・触覚刺激等によって,身体を自身の意思で動かしていないにも関わらず「動かした」と感じる錯覚を運動錯覚と呼びます.この錯覚はリハビリテーションに利用することで効果が得られることが知られています.本研究では,電気刺激による強制的な身体運動と身体が動く様子の映像を同時に提示することで,運動錯覚の生起させるシステムを作成しました.このシステムにより,電気刺激と映像刺激の併用が運動錯覚に効果を及ぼすことを確認しました.

遠隔参加可能なグラウンドゴルフシステムの開発

遠隔参加可能なグラウンドゴルフシステムの開発を行っています.近年、高齢者が体を動かしながら友人と交流が可能な場としてグラウンドゴルフが広まっています。本研究では身体的、環境的な問題により屋外でグラウンドゴルフができなくなった人が、自宅でもプレー可能なシステムを提案します。自宅にいる人に対し、グラウンドゴルフの現場の映像や音を提示、現場の人には自宅にいる人の映像や音を提示することで、遠隔地間のコミュニケーションを可能にします。また自宅でのクラブのスイングに合わせ、現場でボールを打ち出す装置により、現場の人と一緒にプレーを可能にします。本システムにより遠隔地にいる人との新しいコミュニケーションの方法を目指していきます。

気化熱を利用した冷感提示システムの開発に関する基礎研究

気化熱を利用して体に冷感を提示するシステムの開発を行っています.液体の物質が気体になるときに周囲から吸収する熱のことを気化熱といい,体温調節にも利用されています.人は暑い場所にいると汗を掻き,風を受けることで汗を蒸発させ,体から気化熱を奪うことで体温を下げています.しかし,汗を掻くと体がべとつき,不快に感じてしまいます.そこで,汗の代わりに水滴を蒸発させることで,快適に体温を下げることができるのではないかと考えました.本研究では背中に提示部を装着し,水と空気を送ることで提示面に冷感を提示できるシステムを開発しました.

温度感覚

頸部への温度提示による印象誘導

温度は人間や生物にとって重要な環境パラメータの一つです.このため,エアコンやストーブなどの多くの温度制御機器が開発されていますが,これらの多くは温度を一定に保つ事が目的であり,急激に温度を変化させることは想定されていません.温度感覚は,空間分解能や時間分解能はそれほど高くないものの,急激な温度の変化は危険の察知にも利用されており,各種の情報提示に応用できる可能性は高いと考えられます.温度変化を用いたインタフェースの多くはペルチェ素子が用いられていますが,ペルチェ素子の主な目的はCPUなどの機器の冷却などであり,応答速度が速くならないという課題があります.そこで本研究では,熱媒体として比熱が大きく粘度が低い水を用いたシステムを提案します.弁により流れる温水・冷水を切り換えることで提示部の温度を高速に変化させます.これにより,約30℃の温度差を約1秒で切り換えることが可能となりました.このシステムの別のコンテンツと組み合わせを検討しています.

サーマルグリル錯覚提示

温度感覚に関してサーマルグリル錯覚という錯覚があります.温刺激と冷刺激を交互かつ同時提示するとあたかも火傷を負ったかのような痛みや灼熱感,不快感が生じるというものです.皮膚に損傷を与えることなく,擬似的に痛みを生起させることが可能であるため,この錯覚をヒューマンインタフェースへの様々な応用が考えられます.そこで本研究室では,熱媒体に水を用いて,サーマルグリル錯覚をより多くの人により強く生起可能なデバイスを開発し応用を検討しています.

技術支援

書字動作支援システムの開発

書字動作支援ロボットの開発を行っています.書道教室などで,先生が生徒の手を取って一緒にきれいな文字を書くという指導が行われています.私が開発したロボットは,この先生のように書き手と一緒にペンを握って適切な力を加えることで,きれいな文字を書く支援を行います.始めは,ロボットに強制的に動かされていると感じる問題がありました.そこで,人が実際に文字を書く時の動きを研究したところ,書く線の曲がり方によって速度が変化していることが分かりました.ロボットにこの速度を再現させることで違和感を小さくすることに成功しました.現在は,お手本通りではなく個人の特徴を残したまま文字をきれいにする支援を目指しています.

        

リハビリテーション

視覚と触覚の同時提示により運動錯覚を誘発するボール回しシステム

錯覚を利用したリハビリテーション機器の開発を行っています映像などを通して,実際に自分が動いていないにも関わらず,動いたと錯覚してしまうことを運動錯覚と呼びますこの運動錯覚は麻痺のリハビリテーションなどに利用されていますそこで健身球と呼ばれる二つのボールを回すリハビリテーションに着目し,患者の手に重ねたモニターでボール回しの映像を見せながら,実際に回っているボールを患者の手に押し当てる装置を開発していますこの装置により,患者は視覚と触覚でボール回し運動を体験でき,強い運動錯覚を起こすことができることを確認しました

        

鏡像運動を利用したリハビリテーション支援器具の開発

片麻痺患者のための上肢リハビリテーション支援機器の開発を行っています.現在,片麻痺の回復を図る方法の一つとして,Cミラーセラピーが行われています.これは健常肢が映った鏡の裏に麻痺肢を置き,鏡を見ながら健常肢を動かしたときに,あたかも麻痺肢が動いていると錯覚する現象を利用したリハビリテーションです.本研究では,このミラーセラピーに着目し,錯覚ではなく実際に麻痺肢を動作させることによって,よりリハビリテーション効果が高まると考え,健常肢の動きを麻痺肢に伝える機器を開発しました.本装置は誰でも手軽に利用できるように,モータ制御やコンピュータ操作などの専門知識を必要としないシンプルな構造とし,訪問看護でのリハビリテーションが行えるよう,軽量で持ち運びが可能な設計を行いました.今後は,実際に医療や介護の現場で使用して,十分なリハビリテーションの効果が得られるかを検証したいと考えています.

     

技能訓練

バーチャルバッティングトレーニングシステム

タイミングに着目したバーチャルバッティングトレーニングシステムの開発を行っています.ここでのタイミングとは,投球に対して打つと判断してバットを振り始めるタイミングのことです.従来のタイミング訓練は,何球も投球を見てタイミングを見極めており,正しく見極めできたかどうかの判断が難しいものでした.本研究では,バーチャルリアリティならではの訓練システムにより,タイミングを誘導することで,正しいタイミングを学習することができます.また,訓練時には投球が遮断される遮断投球を使用します.打者の「投球を途中まで見て,その後は予測し球の到達点に目線を先送りする」と言う知見から,打者が本来見ていない部分は見せずに訓練することができます.本訓練システムでは,ヘッドマウントディスプレイによるVR空間の提示をしているため,あたかも自身がバッターになったかのような感覚を味わうことができます.